重機危険検知システム ー監視カメラから重機へ、リアルタイムオブジェクトトラッキングで危険を通知ー

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リアルタイムオブジェクトトラッキングを用いて、建設現場の接触事故を防ぐ、デジタルツイン構築サービス「ヨミトル」重機危険検知ソリューションは、ファーストループテクノロジー株式会社(以下、FLT)の主力サービスの一つです。

今回は、重機危険検知ソリューションの開発秘話について、彦坂CTOとアプリケーション・アルゴリズム開発 チームマネジメントの渡邉さんにインタビューをしました。

Q.重機危険検知ソリューションとは?

◆彦坂:重機危険検知ソリューションとは、監視カメラの映像から、重機や作業員の位置や動きをリアルタイムで検出し、重機と作業員が接近した際には、重機の操縦者に注意喚起して事故を防止するシステムのことです。

FLTの提供するデジタルツイン構築サービス「ヨミトル」のソリューションの一つでもあります。

◆彦坂:建設現場では、重機と人の接触事故が昔から多数発生してきました。死亡事故が発生した場合、企業に大きな影響を与えるため、重機による接触事故を減らしたいという強いニーズがあります。

従来、建設現場の接触事故を防ぐために、誘導員による誘導や重機への全方面カメラの取り付けなど様々な工夫が施されてきました。しかし、現在でも、建設現場での接触事故はなくなっていません。

こうした課題を受けて、FLTでは、建設現場に設置した監視カメラで、トラック・重機・作業員などの位置を24時間俯瞰的に把握し、リアルタイムで危険な状態を検知して、事故を未然に防ぐシステムを開発しました。

具体的に説明すると、まず、監視カメラが重機や作業員などをリアルタイムで画像認識・検出して、監視カメラの設置位置やひずみを考慮し、対象物の二次元の位置を計算します。

それぞれの対象物の位置が近い場合、システムが危険な状態であると判断し、重機の操作席近くに設置してあるタブレットに、その情報を投影します。また、同時に重機からアラート音が鳴ったり、視認性の良いライトが光ったりします。

システム導入の際には、カメラの取り付けから、基盤の開発、タブレット管理まで、一気通貫してFLTが行います。

Q.開発のきっかけは?

◆彦坂:アスファルト合材工場の元上役に、FLTの得意とする「カメラからリアルタイムで物体を抽出してコンピューター上で加工するという技術を紹介したことがきっかけです。

この技術が、合材工場での接触事故防止に役立つのではないかとご提案いただき、開発が始まりました。

従来、多くの建設現場で取り入れられてきた誘導員による誘導には、「目視可能な範囲に限界があり、網羅性がない」という課題があります。また、作業開始前後などの誘導員がいない時間帯に重機による接触事故が発生することもあります。

また、重機取り付け型の全方位カメラについては、土汚れや暗所による視認性の悪さ、建物の影や出会いがしら等の死角、重機の移動に伴うカメラのズレなど、便利なツールではあるものの、接触事故を完璧に防止できるわけではないという課題がありました。

そこで、それらの既存のシステムを補完して、より安全性を高めるために、FLTでは、監視カメラベースの重機危険検知システムを開発しました。

Q.FLTだからこそ実現できた点は?

◆渡邊:FLTには、技術的な強みと組織的な強みがあります。

①技術的な強み

元々、FLTには、空間情報処理の知見を持つエンジニアが多く在籍しており、どのように監視カメラを設置すれば、効率的に現場全体を監視できるかシミュレーションできるため、早い段階で技術を確立することができました。

監視カメラの特性調査、現場での地理情報の測定に力を入れ、1m以下の誤差でリアルタイムに検知結果を出せるようになりました。

また、監視カメラは、事故の録画・防犯など、重機危険検知以外にも様々な用途で使用できます。実際、重機危険検知システムの導入企業では、監視カメラを活用したモニタリングソリューションも同時にご導入いただいています。

このように開発全体を通して、理論にとどまらず、現場での情報を取得してきたことで、例えば「メーカーの仕様では100までいけるはずだが、屋外の現場で実装すると75までしか対応できなかった」という細かな粒度で、作り方のアンチパターンなどのノウハウが貯まりました。

◆彦坂:タブレットに表示するアプリケーションの開発から、クラウド・独自基盤の作成、最先端のエッジコンピューターの検証、監視カメラ取り付けの電気設備まで、全て内製で、幅広く開発してきました。課題ドリブンに何度も検証を繰り返し、精度や通信などの課題を改善してきたという自負があります。

②組織的な強み

◆渡邊:FLTは少人数の会社ですが、広い知識を持つエンジニアチームだからこそ、重機危険検知ソリューションを開発できたと感じています。

これまで利用したことのない技術を使う時には、技術調査部隊を作り、丁寧に技術調査を行いました。また、技術調査と並行して、アプリケーションの作成などを行ったため、短期間で重機危険検知ソリューションを完成させることができました。

◆彦坂:開発手法は多数存在していますが、FLTではプロトタイプ型の開発をすることが多いです。システムとしての完成度が低い段階でも、まずは現場に入れるようにしています。システムを利用したお客様の声を聞きつつ、アップデートを繰り返すことで、結果的に満足度の高いソリューションができると考えています。

Q.開発を通して、苦労したことは?

◆渡邊:先述した通り、重機危険検知システムは、全てFLTで内製しているため、カバーしなくてはならない技術の範囲が広いです。

その分、機能や性能(検知時間など)を改善するために、様々なアプローチができますが、全てを最大限に仕上げようとすると、手が足りない状態になります。お客様の期待に応えつつ、どこまでの精度を目指すべきか、常に判断の求められる開発でした。

また、このプロジェクトは、FLTの社員が少ない時から始まったので、特定の個人にしかわからないことが多数あります。システムの全体を把握しているエンジニアが少ないため、トラブルが起きた時に、原因を特定できる人が限られています。

新メンバーにプロジェクト全体をどうやって理解してもらうかが今後の課題です。

Q.開発を通して感じたやりがいは?

◆渡邊:カメラの選定に始まり、サーバーからユーザーインターフェースまで、現場の声を聞きながら仕様を固めていきました。

また、シミュレーションでうまくいっても、現場ではシステムが動かないということもあるため、不具合の原因を特定するために、現場に頻繁に訪れていました。

このように、現場を訪れた際にお客様からフィードバックをいただけると、やりがいを感じることができます。

◆彦坂:重機危険検知システムは、FLTとしては、現場導入後、365日動き続けている初のプロダクトとなります。FLTの技術を集約して作ったこのシステムを、形にしてリリースできたことに満足しています。

身に着けた技術を用いて、世の中にないものを開発し、これまで入手できなかった情報に継続的に触れられる環境は、技術者として大変面白いと感じています。

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